20do

ひと

素材の味を知る機会をつくりたいのイメージ画像

2018.07.31

インタビュー

素材の味を知る機会をつくりたい

やまぐち橄欖店、chocoholic roastery/山口直人さん

 宮崎県で初となる、bean to bar のチョコレート専門店として、2018 年5月に宮崎市神宮にオープンをした『chocoholic roastery(チョコホリック ロースタリー)』。お店では、カカオ豆からチョコレートになるまでのすべての工程をひとつの工房で、一貫して製造するbean to barを取り入れています。ここは、同じく宮崎市神宮にあるオリーブオイル専門店のやまぐち橄欖(オリーブ)店の店主である山口直人さんが新たにオープンしたお店です。2つの専門店を手がける、山口さんがお店を始めたきっかけなどお話を伺いました。

はじめて素材の味を知った

 山口さんがお店を始めたのは、33歳の時。オリーブオイル専門店のやまぐち橄欖(オリーブ)店から始業しました。新鮮で質の良いオリーブオイルは、オリーブソムリエである店主の山口さんがオーストラリアに足を運び、味と品質を確認して仕入れています。店頭では、エクストラバージンオリーブオイルの量り売りをしているそうです。山口さんが専門店にこだわるのは、『素材の良さを知る』という経験からでした。「会社員時代に、健康のために市販のオリーブオイルを飲んでいました。その時は、全然美味しさが分からなかったんです。ある日、オリーブオイルの講習を受ける機会があり、その時、初めてエクストラバージンオリーブオイルを飲んで、味が品質によって違うことに感動しました。そこで、専門的な講座を受けない限り、知る機会がないことに気づいて。そんな機会を作れるように、いつか宮崎で専門店を始めたいと思うようになりました」

お店を始める決意

 お店を持ちたいと理想はあっても、現実的には資金が必要と、山口さんは考えました。まずは、開業資金を貯める為に、県外で働くなど、様々な仕事を経験しました。その時、山口さんがイメージしていたお店は、オリーブオイルの専門店とチョコレートの専門店の2つのお店をもつことでした。「チョコレート専門店を持ちたいと思ったのも、オリーブオイルに出会ったきっかけと似ています。県外で初めて、bean to bar のチョコレート専門店に行った時に、食べたチョコレートが今まで口にしてきたものと違い、素材の味を感じて驚きました。また工房で、できたてのチョコレートを目の前で、食べられるワクワクする体験がとても魅力的でした。宮崎では、bean to bar のチョコレート専門店がなかった為、自分でお店をつくりたいと思いました」

好きなことを仕事に

 念願だった2店目のチョコレート専門店を始めた山口さん。20代の時に経験した、素材の良さを知る機会を、いろんな人に経験して欲しいという思いが『専門店をつくりたい』と思う原動力になりました。またお店を始めたことで、会社員としての今までの働き方と、大きく変化していきました。「会社員時代は、なんとなく自由がない気持ちになることがありました。お店を始めて、個人事業主としての責任はありますが、気持ち的にはすごく自由で。自分には合ってると思います。営業時間を自分で管理できるなど、時間的な自由もありますが、気持ち的に余裕が生まれるのは、好きなことを仕事として出来ているからだと思います」

対話を大切にしていきたい

 自分の好きなことを、仕事にする理想を実現させた山口さん。必ず大切にしていることがあるそうです。それは、専門店だからこそ出来る丁寧な説明。商品の素材や産地、作る工程などをお客さんに話してから、購入してもらうそうです。また新店舗のチョコレート専門店では、でき上がる工程も楽しむ体験をしてほしいと、工房の窓をガラスに。できたてのチョコレートが、カウンター越しでティスティングできるそうです。「良いもの=(イコール)高いものと勘違いされがちですが、高ければ良いものとは限らないと、私は思います。どちらのお店でも、初めて来店された方には、15分ほどかけて商品の説明をしたり、ティスティングをしてもらっています。今の時代、お店に陳列されている商品を買う機会が多いと思います。ですが、私は人と対話して、商品を買ってもらえる専門店だからこそ出来ることを続けていきたいです」

 自身の経験から専門店を通して、素材の良さを伝えたいと決意をした山口さん。商品がインターネットで購入でき、スーパーなど陳列された商品を購入する機会が多い時代。商品をつくる人と対話をしてから購入できるお店は、とても魅力的だと感じました。山口さんはこれからも『素材の良さを知ってほしい』という思いを込めて、カウンターでお客さんをお迎えしていました。