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株式会社ここく 加藤潤一さんのイメージ画像

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2021.08.10

インタビュー

株式会社ここく 加藤潤一さん

広告デザイン業界から転身
宮崎で農家に

 大阪や東京で長年グラフィックデザイナーとして活躍。国内外で数々の賞を受賞しながら、2011年3月に宮崎に移住し、農業法人「ここく」を設立した加藤潤一さん。宮崎で農業をする思いをお聞きしました。

-2011年に移住されていますが、きっかけは何だったのですが?
妻が宮崎出身なんです。震災がきっかけと思われがちなのですが、もともと宮崎で農業を始めるつもりで、土地と家も買っていました。下の子どもが小学校に入るタイミングで移住する予定でした。
-宮崎を選んだ理由は、奥さまの実家があるのが大きかったですか?
長野なども候補に挙げていたんですが、宮崎は気候が良いし、食べ物もおいしい、子どもを育てるにも良い環境です。移住後に「野良音」という田んぼを使った音楽イベントを開催したのですが、新しい事を始めることに対して年配の方が理解を示してくれたのも印象に残っていますね。

加藤さんがほぼ一人で作業をしている畑。自然農法にこだわった麦や大豆をつくっている。

「食に興味がない」から
一転して食の世界に

-農業に関心を持ったきっかけは?
デザインの仕事では、大きなプロジェクトも任され、賞ももらいました。でもパソコンだけで仕事が完結するからか、次第に生きている実感が湧かなくなってしまって。そんなとき、たまたまスローフードの本に出合い、食やその背景に関心を持ちました。それまでは、「ガリ」がショウガだと知らないぐらい食に興味がなかったんです。
-なぜ自分でつくろうと思うようになったのですか?
当初は自分が学んで知ったことを、楽しみながらブログなどで発信する程度で良いと思っていました。でも自分でやってみないと分からないと思い始めて。子どもが病気になったこともあって、より強く自分の手でつくりたいと考えるようになったんです。

すべて自家栽培の材料でつくった麦みそやしょうゆのほか、黒潮から汲み上げた海水を使った薪炊き塩なども販売している。

目に見えない思い、
ストーリーを大事にしたい

-宮崎で受け継がれてきた在来種に注目して農業を展開されていますね。
農業は課題をたくさん抱えていますが、その根柢にあるのは「食べ物を物質として扱っている」ことだと思ったんです。だから「ストーリー」がある在来種に注目しました。収量や形の均一さでは劣っても、食材や生産者にまつわる話はたくさんある。それを売りたい。「ものを創造して届ける」ということでは、農業はデザインとも共通すると気付いて。移住当初は農業一本という気持ちでいましたが、今はデザインの仕事にも積極的に取り組んでいます。
―20do 世代に伝えたいことは?
宮崎に住み続けたとしても視野が狭くなる訳じゃない。首都圏で暮らさなくてもいろいろな価値観に触れられるはず。自分の働き方次第なんだよと伝えたいですね。

今年、自社商品を販売する店舗をオープン。みそづくりワークショップなども行っている。

 

ここくのお店
宮崎市清武町船引3996-1
☎0985-72-7256
 10:00~17:00
 日曜日・祝日
公式ホームページはこちら